佐賀大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座

Department of Otolaryngology - Head & Neck Surgery ,
Saga University Faculty of Medicine

臨床研究のお知らせ


当科では、以下の臨床研究が現在進行中です.概要をご一読いただき,臨床研究へのご参加を検討していただければ幸いです.詳しくは担当医がご説明します.


① 頭頸部扁平上皮癌根治治療例に対するTS-1補助化学療法の至適投与方法の検討試験

 頭頸部扁平上皮癌の根治治療後の再発や転移を防止するために行われている補助化学療法の一つが,抗癌剤TS-1の内服です.通常はTS-1の2週間内服1週間休薬,または4週間内服2週間休薬という方法で行われ,1年をめどに継続します.しかし,この方法では副作用のために治療が継続できないことがあります.

 本研究では,TS-1を週7日のうち4日間隔日に内服する方法(TS-1隔日内服法)を行い,副作用の軽減効果など安全性を検討するとともに,補助化学療法としての有効性を検討します.


② 再発・転移頭頸部癌に対するTS-1+セツキシマブ併用療法の有効性と安全性の検討

 根治切除ができない再発・転移頭頸部癌に対する海外のガイドラインで推奨されている標準治療の一つは抗癌剤シスプラチン・5-Fuと分子標的薬セツキシマブの3剤併用療法ですが、腎機能障害など有害事象に対し注意が必要であり、治療の継続が困難となることがあります.またこの3剤併用療法は少なくとも1週間程度の入院が必要です.

 本研究では,入院を必要としない内服抗癌剤TS-1と外来化学療法室でのセツキシマブ点滴投与を併用する治療法を行い,その有効性と安全性を検討します.


③ ハイリスク頭頸部扁平上皮癌根治治療例に対するTS-1+セツキシマブ併用補助化学療法の有効性と安全性の検討

 進行頭頸部癌の根治治療として手術,放射線治療,化学療法およびそれらを組み合わせた集学的治療を行います.また根治治療後の再発や転移を防止するために、有用性が示されている治療後の補助化学療法(adjuvant chemotherapy)を行っています.

 本研究では,進行頭頸部癌の中でも根治治療後に再発・転移をきたすリスクが高い患者さんに対し、通常行われている補助化学療法であるTS-1の隔日内服に加えて,分子標的薬であるセツキシマブを併用する補助化学療法を行い,その有効性と安全性を検討します.


④ 中咽頭扁平上皮がんに対する集学的治療の効果とヒト乳頭腫ウイルス感染との相関に関する臨床研究 (東京医療センターを事務局とする多施設共同研究として実施しています)

 口蓋扁桃などに発生する中咽頭癌の中に,ヒト乳頭腫ウイルス(Human papilloma virus; HPV)の感染による発症例が増加してきています.こうしたHPV関連中咽頭癌は従来の喫煙・飲酒で発症した中咽頭癌に比べ,抗癌剤を同時併用する放射線治療(化学放射線療法)などの集学的治療の効果が高いことが,欧米を中心に報告されています.

 本研究は我が国におけるHPV関連中咽頭癌に対する集学的治療の効果を,多施設で共同し検討するものです.実際には中咽頭癌の組織から組織サンプルを採取し、HPV感染の有無を調べます.治療法はHPV感染の有無にかかわらず同一の治療を進行度にあわせて行い,その治療効果を比較検討する研究です.


⑤ 化学放射線療法に伴う口腔粘膜炎および味覚障害に対する黄連解毒湯の有効性に関する検討タイトル

 頭頸部癌に対する化学放射線療法に伴う口腔粘膜炎および味覚障害は、痛みによる経口摂取の障害など患者さんのQOLを著しく低下させるとともに、治療の縮小や遷延化、さらには医療コストの増大をもたらす重大な有害事象の一つです.

 口腔粘膜炎に対する治療としては局所麻酔剤や粘膜保護薬、オピオイドなどが用いられていますが、十分な予防効果や治療効果はまだ得られていません.

 化学放射線療法に伴う口腔粘膜炎はその発生機序として、フリーラジカルなどの関与で口腔粘膜が障害され炎症性変化が生じることと、それに引き続き、免疫力低下に伴う易感染性による口腔内感染の二つがあることが知られています.また味覚障害の治療については、ポラブレジンクなどの亜鉛含有製剤などの投与が有効であるとの報告がありますが、これも十分とは言えません.黄連解毒湯に多く含まれる黄連の主要成分であるベルべリンは,強い抗炎症作用、抗菌作用を有することから、口腔粘膜炎および味覚障害に対する予防効果や治療効果が期待されます.

 本研究では、化学放射線療法と同時に黄連解毒湯またはアルロイドGを使用し,口腔粘膜炎および味覚障害に対する予防効果や治療効果がみられるかどうかを比較検討します.


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